2008/01/14

erika

今日は受験生の為のレッスンでした。
もう来週には受験日。
彼女の緊張と焦りが演奏の中にも響いて
何度吹いても出来ない箇所にもどかしく
練習しすぎて口の力が抜けて安定せず
彼女が突然溢れだした涙を止めることが出来ず
泣きだしてしまいました。

慰めたいし、泣いても上手くならないと厳しい現実も伝えたい、
でもどうしたらいいんだろう、どうしたら・・・
と、指導者として一瞬だけオロっとしましたが、
気がついた時には私が泣いていました。


彼女の本気に音楽をやっていきたいという気持ちと
彼女のこれまでの経緯を知っている分、
演奏や音を聴けば、本当に気持ちが痛い程伝わり
気がつけば、私が生徒の前で、涙が止まらなくなりました。

生徒は泣いている私に気がついて、じっと見てたのですが
私こそ何か胸からあふれてきて生徒以上に泣いてしまって。
お互い少し落ち着いて、私が「先生が泣いても・・・ね。ごめんね」
と伝えると、彼女が「先生、ジュース買ってきます。」と
私の為にジュースを買ってきてくれる始末。笑
戻ってきた彼女は笑顔で、先生もう大丈夫です。もう一度お願いします。
って言ってくれて、持ってた缶コーヒーを私に渡し、再び演奏を始めました。

私も気を取り直して、指導再開し、レッスン時間終了後、
私も明後日自分のオーディションなので他にスタジオを予約していたのですが
少し彼女と話をしたくて、一緒に居たくて、時間を作りました。

あと1週間前になり、気持ちも焦り不安定な精神状態で
考えれば考える程、自分に自信がなくなると教えてくれた彼女へ、
私もいつも同じ気持ちでいる事を伝えました。
生徒からすれば先生は絶対なのかもしれない、でもそうじゃないって。
本番前、練習すればする程、苦しくて辛くなり、演奏自体は完成されつつも
どんどん落ち込んで行く自分を教えました。
本番前も緊張のあまりトイレから出れずに気を失いそうになったり
吐き気が止まらない事も。そして本番の途中で舞台から逃げ出したい事もある事を。
弱い部分を、素直に教えました。

今日なぜ涙が溢れてしまったか、自分の事でさえ本番前は弱くて
とても怖くて崩れそうなのに、自分の大事な生徒が同じ悩みの中で
不安に押しつぶされてるのがとても可哀そうで自分の事以上に
とても心にしみてわかるから、私こそ涙を流してしまってごめんなさいと
謝りました。もっと指導者として凛としていなかればならないのに。。。

もう一つ伝えました。
そして、本番前のその悩みの中で、もう一度自分を追い込むのが好きだと。
ステージに上がれば、たとえどんなつらい事があっても
笑顔で何事もなくいなければならない、体調が悪くてもステージでは
元気な振りをしなければならない、もし現状をステージの上で見せてしまうのは
私の中では無いのです。それはプロじゃない気がするから。
そこで自分の弱さを見せて、それってとても簡単だし甘えるのも楽だし。
そうしたい事沢山ある。普段の自分はとても素直で
甘えるし我ままだし体も強い方じゃないから皆に先に伝えてしまう方です。
でもそれをステージでやるのは出来ない。

一体何の為に楽器を選んで貫いて来たのか、
家族や友達と別れて自分の夢を選んだ理由を
つらい時こそ思い出して、自分を奮い立たせています。
今、甘えたら、今、許したら、頑張ってきた大事な物を壊してしまう気がして、と。

でもね、本当を言えばいつだってどこだって
背中をふと優しくさすられたら、寂しさや哀しさや切なさが溢れて来て
人恋しくて家族恋しくて一人で頑張る事が辛くて、どこでも泣きたくなるよ・・・と、伝えました。

厳しい指導を受けてきた学校にいる子だったので、悩んでいたのかもしれません。
機械的な音楽の中で苦しんで、損得ばかりの音楽の周りの人に疲れて、
納得いかない押し付け指導に潰されて、自分の気持ちを素直に言葉にも出来ず。
彼女はハーフでお父さんがアフリカ系アメリカ人の方。
でも今は母親と双子の兄と三人でずっと暮らしてきて父親を知りません。
普段はいつも冷静でシャンとしていて少し生意気位な彼女は
ずっと色々抱えてきた想いがあったんだと思います。
そして楽器だけが唯一残った自分を癒して素直にしてくれる物だったのかもしれません。


彼女は、私の話を聴いて顔が変わってきました。
私もした事が無いほど、凛々しくて目の奥で何かをじっと見据えて
威風堂々とした姿勢にかわりました。
そして私に最後に、
「先生みたいに、嘘つかなくて大事な事をちゃんと知ってる大人に
なりたいです。本当はもうすぐ本番で怖くて不安だったんですが、
先生が泣いてくれたし、私が頑張れば先生は笑ってくれるから!
本番まであと1回のレッスンですが、よろしくお願いします」
と言ってくれました。

また号泣。。。笑

彼女の受験、合格不合格もとても大事ですが
それよりなによりもきっと、堂々と自分の心をこめて気持ちを素直に
皆の前で演奏してきてくれるだろうと確信しました。
彼女の音楽、私はとても大好きです。
どうかいつまでも忘れないで、音楽を大事にしてほしいなと思いました。

その後遅れて自分の練習を無我夢中でしましたが
いまいちプー・・・・ あぁぁぁぁぁ私こそ不安で怖くて気を失いそうです・・・・!!
明日のリハーサルにかかってるわ・・・あさっての本番なんとか頑張らねば。

絶対に成功させよう。
彼女の為に。

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